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透明素材でサイクロン集塵機を作る【内部を観察】

今回は「透明で中が見えるサイクロン集塵機」を作りました。

材料は100均のクーラーポット、ガラスビン(3L)、アクリル板のほか、接続部には木材を使いました。

透明素材で中を観察できれば、問題点を解決しやすくなったり、サイクロンへの理解が深まりそうです。

前回のサイクロン

前作の記事です。「サイクロン集塵機って何?」という方向けの簡単な説明もこちらにあります。

このサイクロン(JSK式)をこれまで約3年間使ってみた感想(と欲求)です。

  • ゴミ捨て回数が激減 →「手入れが楽」を維持したい
  • 掃除機の清掃はそれなりに大変 → 細かい粉塵の捕集率を上げたい
  • 木屑がダストボックス(20L)の半分以上たまったことはない → 小型化したい

これを踏まえて今回の設計をしました。

本体もダストボックスも、かなりの小型化になります。サイクロン径は小さいほうが遠心力が大きくなるので、粉塵の捕集性能に期待しています。

製作

加工は木部がほとんどで、円形のくり抜きが多いです。

「自在錐で円形の型を作る → トリマーで倣い加工」の順でくり抜きました。

横穴はボール盤とトリマーであけ、内側をヤスリで滑らかにします。

製作にあたって注意したのは接続部に隙間ができないようにすることです。

クーラーポットの上下は木材への差し込み式です。円のサイズはややきつめに調整しました。

ビンの蓋にはゴムパッキンを使います。パッキンはビンに付属していたものです。

ジョイント

白い部品はインレット(入口)とアウトレット(出口)です。3Dプリンターでホースの口径に合わせて作りました。

素材のレジン(樹脂)は、ヤスリ掛けしたり、木材に接着することができます。

 

アウトレット管に、台に載せた掃除機の本体を直に接続します。

掃除機

掃除機は電源コード付きのハンディクリーナー「ツインバード・HC-EB54B」です。

音が大きいですが、それに見合ったパワーがあります。

スイッチはスライド方式なので「掃除機側はONに固定し、フットスイッチで電源のON/OFFを切り替える」という使い方ができるようになりました。

今までは、いちいち掃除機の運転ボタンを押しに行く必要がありました。1~2歩ですが、何度も繰り返すのでかなりの違いです。

ホースの先端には、掃除機ヘッドなどのアタッチメントを接続できます。

排水ホースは首が破れやすく耐久性に難ありですが、丸ノコやトリマーの集塵アダプターにも接続できるので助かっています。

テスト1.再飛散する問題が発生

何回か木材のカットをして、木屑を吸い込んでみました。

ビンの中です。かなり細かい粉塵も捕集できている様子です。

掃除機に入る粉塵はわずかです。

ここまではほぼ予想通りで、サイクロンが機能することは確認できました。

 

が、しばらく使っていると様子が変わりました。

ビンにたまった木屑の量が増えてくると、ビンの底から粉塵が巻き上げられ、中で激しく回転し始めました。

さらにはビンから出て、サイクロン下部まで達しています。

この間、掃除機側に入る粉塵も目に見えて増え、大きめの木屑まで入り込んでいました。

これはマズいです。掃除機のスイッチを入れただけで、たまった粉塵が激しく再飛散する状態です。

対策 円錐体を配置する

再飛散防止のために「ダストボックスの入口に円錐体を配置する」という対策をします。

サイクロンに関する論文を検索してみると、分離性能を高めるための試みと実験結果がたくさん出てきます。最近の論文ではこの円錐体をあらかじめ配置している例がほとんどです。

 

円錐体は3Dプリンターで出力し、100均雑貨のワイヤーを使って吊り下げます。

これをガラスビンの蓋に取り付けます。

円錐体はそのうち試すつもりだったので、蓋はあらかじめ分解可能な作りにして溝を掘ってありました。

自在錐で、板を貫通する前に止めれば円形の溝を掘ることができます。

 

ワイヤーを曲げる作業は不慣れで苦労しましたが、ネジで強引に固定しました。

テスト2.大幅に改善

ちょうどまとまった量の木屑が出たので、吸い込んでみます。

木屑が渦状に回転しながら捕集されていきます。

掃除機側の木屑の量にはほとんど変化がありません。再飛散の問題は大幅に改善されているようです。

 

木屑を全部吸い込みました。

次に、掃除機の電源を入れたまま、ホース側の操作を変えて観察してみます。

①・・・下にたまった粉塵が再飛散していますが、少量がビンの中で回転するだけにとどまっているので問題はありません。

②・・・ホースの先をベタッとカーペットに押し当ててみました。風路がふさがると、掃除機はモーターの回転数が上がって吸引力が強くなります。少量ですが、再飛散した粉塵がサイクロン下部まで上がってきているのが見えます。

③・・・ホースの先をカーペットに押し当てたまま2秒くらい経つと、再飛散する勢いが増しました。掃除機側にも細かい粉塵が入っています。

④・・・ホースの先をカーペットから離すと、①と同じ状態に戻りました。

掃除機が通常運転なら問題ありませんが、ホースがふさがって吸引力が強い状態が続くと、再飛散した粉塵が掃除機側へ行ってしまいます。新たな懸念事項です。

 

ここで、ビンの底にたまった木屑が斜めになっているのが気になりました。これはワイヤー固定した円錐体が微妙に傾いている影響のようです。(傾きはあとでクランプで修正しました。)

一度蓋をあけ、木屑を平らにならしてからスイッチを入れてみます。

すると、、、かなり穏やかな状態になりました。

表面の粉塵がわずかに動く以外、再飛散がほとんどみられません。

家庭用のサイクロン掃除機のダストカップ内でも、ゴミが高速回転する部分とほとんど動かない部分がありますが、それと同様のことが起こっているようです。

この状態が続くなら木屑がある程度たまってきても問題なさそうです。引き続き、使いながら様子を見ることにします。

おわりに

円錐体なしでは、再飛散した粉塵がビンの中を縦回転する様子が見られました。円錐体は、気流の進行方向を整える効果が大きいようです。

透明化したことでサイクロンの挙動がいろいろわかって、かなりの収穫です。

今回は「パワーのある掃除機を採用」「小型化」「パーツの最適化」などを行いましたが、それらはすべて吸引力をアップさせる変更でした。

結果、内部の気流が強くなりすぎて再飛散対策を迫られましたが、何とか実用レベルになったと思います。

また、サイクロン本体が一般的な「逆円錐型」よりは「円筒型」に近く、ダストボックスの入口が大きいことも、ダストボックス内の気流の強さに影響していると思います。

当面は「風路をふさぎっぱなしにしない」「木屑の表面は平らにならす」ことに注意しながら運用してみます。

 

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